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あなたに囚われて - 02
「壁に手ェ付いて、ケツをこっちに向けろい」
命令された私はノロノロと立ち上がり、言われた通り壁に手を這わす。木目の壁は思ったよりも冷たくなかった。
マルコ隊長は背後から私の脚を大きく開かせると、ショートパンツと下着を一気に脱がした。
「……ッ、」
冷たい空気が素肌に触れる。
隠すものがなくなったソコに、マルコ隊長の視線が注ぐ。
薄暗さを差し引いても、足を開いてお尻を突き出す格好は泣きたくなるほど恥ずかしいのに……それなのに、さらに屈んで覗き込まれて消えたくなる。羞恥に打ち震えていると、背後でクスッと笑い声がした。
「濡れてるよい」
マルコ隊長はそう楽しげに呟くと、指先でくにっと花弁を左右に開き、また閉じる。
その都度、くちゅ、くちゅ、といやらしい粘着音を鳴らすソコは、その言葉が嘘ではないことを私に教えてくる。
「おれのを咥えただけなのに。イヤラシイねい、名前は」
「っ、や、言わないで……」
『逃げたお仕置き』と称して、私はこれまで何度も彼のモノをしゃぶらされてきた。さっきのように喉の奥を蹂躙されることもあった。そしてその間ずっと、この身に激しい快楽を刻まれ続けてきたのだ。そのせいで、私は彼に奉仕すると条件反射のように濡れる身体になってしまった。彼が、私をそうしたのだ。
「ああ、ほら、また溢れてきたよい。見られても濡らすなんて、名前はとんでもない変態だねい」
「や、ぁ、そんなこと、んっ、あぁっ……」
唐突にマルコ隊長の舌がぬるりと秘所を這う。
花弁を押し退けて奥へと入り込む刺激に、甘ったるい声が鼻に抜けた。私の羞恥心を煽るように、わざとじゅるじゅると露骨な音を立てて愛液が吸われる。
「んっ…あっ、あぁ……っ、」
強すぎる快感から逃れたくて、足を閉じたくともマルコ隊長は決してそれを許してくれない。
幾度も暴かれて悦楽を教え込まれたこの肉体は、容易に彼の愛撫に翻弄され蜜を垂らしていく。
「ひっ、ああぁっ……!」
昇りつめそうな快感に抗い、必死で抑え込んでいたのに、
「ここも、好きだろい」
そろりと這わされた指先が陰核を擦り上げる。ぐりぐりとこねまわされて私は一瞬にして上り詰めてしまう。
「っ、ああぁぁっ……!」
全身を震わせてイッてるのにマルコ隊長は少しも待ってくれなくて。
「もうイッたのかい。ちょっと触っただけなのに、やっぱり名前は淫乱の変態だよい」
呆れたように言葉を浴びせかけ、粘度のある蜜を指に纏わせて胎内に沈めていく。
「ひっあぁ、あぁぁ……っ」
一気に二本の指を差し込まれる。悲鳴に近い声をあげ、私は大きく仰け反った。
「……すごいねい、どんどん飲み込まれていくよい。二本じゃもう足りないかい」
すでにどろどろに蕩けているソコは、二本の指を難なく飲み込む。すぐに三本目が挿入され、陰核の真裏を引っ掻くように擦られる。
「ひっ、ああ、あぁっ、やっ、そこ、や、だぁ……ぐりぐり、しない、で……マル、コ、隊長っ……」
「きゅうきゅう締め付けといて、やだ、じゃねェだろい。あぁほら、こんなとこまで垂らして、仕方のねェ奴だよい」
ツゥ、と内腿を流れる愛液にマルコ隊長がべろりと舌を這わす。
一度イッた身体は感じやすくて、意識に逆らって私を絶頂に導こうとばかりする。
無意識に腰が揺れてしまう。弱点を知り尽くしている指先が私を追い詰めていく。
「……ぁっ、はっ、ぁ、もう、」
ぎゅうぎゅうと指を締め付けて収縮するソコが、もう限界だと訴えている。快感が湧き上がる。堪えようのない快感が。
「あっ、あっ……」
だめ、だめ、
もう、我慢できない……もう……
強烈な快感の渦に飲み込まれる寸前だった。
「……ゃ、……ぁ…」
ずるっ、と指が引き抜かれる。
圧迫していたものが急になくなり、喪失感に身体が震えた。
子宮が、じんじんと疼く。
あと少しだったのに、どうして…………
絶頂をはぐらかされた中途半端な熱が身体を焦がす。
苦しくて、悲しくて、涙が零れた。
「っ、ぁ、あっ、……ど、……し、て…?」
泣きながら振り返ると、ヒクヒクと痙攣する膣口に反り返った屹立が宛てがわれる。
「コレが、欲しいかい? 名前」
ピチャ、と耳たぶを舐めて煽りながら、入り口にぐりぐりと亀頭を擦り付けてくる。
だけど決して中には入れてくれない、そのもどかしい疼きに、じゅわっと膣の奥から蜜が溢れた。
ああ、欲しい……
欲しい、欲しい、欲しい。
マルコ隊長の熱い塊が。
欲しくて、欲しくて、たまらない。
焦らされて頭も身体もおかしくなりそうだった私は、ぼろぼろと涙を流して懇願する。
「欲し、い……マルコ隊長が、欲しい、です……その硬いモノで、私のナカをぐちゃぐちゃに突いて、くださいっ……!」
きっと、ものすごくはしたない顔をしていたと思う。だけど、身体が熱くて堪らなかった。疼いて堪らなかった。長大で硬いマルコ隊長のモノで、指では届かないあの場所を……私の一番いい場所を、思いっきり掻き回して欲しかった。
「上出来だよい、名前……」
弧を描いたマルコ隊長の唇が近づいてくる。
そのまま噛み付くように唇を奪われて……
「っ、ああっ、あぁあ……!」
ズブッ、と一気に奥まで貫かれる。
その瞬間、目の奥が弾け、ビリっと電流が走った。
同時にぶるぶると身体が震えて、漏らしたみたいにビシャ、っと潮が噴き出した。下肢を熱く濡らしながら、ビクン、ビクン、とマルコ隊長のモノを食い締める。
「っ、はっ、名前……、本当にお前は、最高だよい…っ」
息を詰めたマルコ隊長が狂おしく囁く。その声に、胎内がきゅんと疼いて悦ぶ。
「……っ、ほら、もっと喘げよいっ……お前の声、聞かせろい……」
「あっ、んあっ……気持ち、い、んっ、…マルコ、隊長…、あっ、ああっ……」
腰に回されていた手がシャツの中に入ってきて、それまで一度も触れられなかった胸を揉まれる。頂をコリコリとこねられ、同時に子宮口を突かれ、痺れるほどの快感に包まれてしまう。
「あぁっ、んあっ、ああぁっ……っ!」
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
気持ちが良くて苦しくて、もうどうにかなってしまいそうだった。
「……ああ、いい声だ……たまんねェよい」
酔い痴れるように呟いて、背後から逞しい腕が私の身体を掻き抱く。顔を寄せられ、彼の唇が私の唇を奪う。肩越しのキスに、私は一生懸命舌を伸ばす。
「んう、ぅ…、んんっ……」
舌を吸って絡められ、溶け合う唾液がこぷっと唇の端から溢れた。それを追うマルコ隊長の唇が一旦離れ、ちゅる、と吸って舐めて戻ってくる。口腔をぬろぬろとねぶられ、ぐぐっと舌が深く差し込まれ、口内も膣内もマルコ隊長に埋め尽くされる。ぐちゅぐちゅと、体液の混ざり合う音が上からも下からも聞こえてきて、まるで両方同時に犯されている気分だった。
ああ、欲しい。もっと……もっと……
私は唇を求め、舌を求め、彼を求めた。
「……名前」
ふいに唇が離れて、名前が呼ばれる。
普段は聞けない甘く切ない声音。胸がずくりと疼いた。
閉じていた瞼をうっすら開ければ、苦しげな表情の彼が私を見ていて。
…………あ、
熱を帯びた青の瞳と視線が溶け合い、きゅっと胸が熱くなる。切なくなる。
…………ああ、
触れたい。
彼に、触れたい。
彼の首にぎゅうぅと縋り付きたいのに体勢がそれを許してくれない。ぎりっと壁に爪を立てると、背後から伸びてきた大きな手に、ふわっと包み込まれる。一本一本指を絡めて握り込まれると、それはまるで恋人達の繋がりのように温かくて、泣きたくなった。
「っ…はぁ、あっ、あ、マルコ……隊、長……」
「くっ……、はぁ…名前」
本当は、もうずっと前から分かっていた。
「あっ、あぁっ、マルコ、隊長…っ」
──────好き。
思わず叫びそうになる言葉をグッと呑み込んで、私は啼く。
強要された行為だったのに。
ひどく恨んでいたのに。
けれど身体を支配されるうち、いつしか心まで囚われてしまった。
時折見せる彼の甘い表情が、たまらなく好きだ。
名前を呼ぶ時のかすれた声も、苦しげな吐息も好き。
私を求める彼の全てが愛おしい。
……でも、あなたが欲しいのは私の身体だけ。
愛の言葉は囁かない。
無理やり身体を、心を、奪って縛り付けたくせに、あなたは本当にひどい人。
「ん、っ…ああぁ……っ!」
グッ、と押し込まれて背中が仰反る。
これ以上奥なんてないのに、引くことはせずただただ奥へと腰を進めるマルコ隊長。
意識を持っていかれそうになりながら、辛うじて立っている。そんな状態なのに、腰の速度は増していく。
ぐりぐりと子宮を抉られる。
「ひっ……あぁ…っ!あぁっ! だめっ、それ、だめぇ……!」
「……ッ、そんな、締めるな…、名前ッ、千切れちまう、だろいッ……!」
ぐちゅぐちゅぐちゃぐちゃと、淫らな水音が激しくこだまする。抗えない快感が駆け上がっていく。背筋を。脳を。身体中を。
「んんっ、も……い、く……イっちゃ…ぅ…っ!」
「……ああ、イけよい、名前。おれも、もう……ッ」
「あぁぁあぁっぁ……っ!」
いっそう切ない声が耳元に吹き込まれた瞬間、私は震えながらプシャ、っと潮を撒き散らせてイった。
「……ッ、…名前……っ!」
同時に達したマルコ隊長の白濁が、私の中に勢いよく注がれていく。
「……ぁ、……」
ドクドクと、胎内を侵食する熱い飛沫。
そのうねりを受けながら、私は彼の腕に抱かれたまま意識を失った。
