Novel
存在意義 - 02
そっ、と名前の口内に自らの舌を侵入させる。
薬のせいでまだ上手く動かない舌を必死に伸ばし、名前のそれに絡ませる。
『私を受け入れて』と泣いて縋る名前への、精一杯の意思表示だった。
舌を絡めると名前が一瞬驚いたように瞳を見開いた。
だが、すぐに俺の頭を掻き抱き、自ら舌を絡めてくる。
「…… ああ、サッチ、好き、好きなの……」
うわ言のように繰り返される言葉を飲み込み、唾液を混ぜ合わせて深く貪る。
そのまま俺たちは、時間を忘れたように夢中で互いの舌を舐めて吸った。
やがて長く濃厚な口づけが終わると、二人の唇から透明な糸が垂れた。
「俺も、名前が好きだよ」
長年秘めていた想いを言葉にする。
この禁句を口にする日がくるとは思わなかった。
それも、素っ裸で寝そべって。
本当は抱き締めて言いたかった。
それだけが、悔やまれる。
でも名前は、そんな格好付かない俺の胸に飛び込んでくるんだ。
「……サッチ、本当? 嘘じゃない?」
涙目の名前が俺を見上げる。
可愛いな、と思う。
「ああ、もう隠さねェ。本当は俺もずっと名前が好きだった。この世に、お前以上に愛せる女はいねェよ」
偽りのない本心だった。
名前は最愛の女だ。
昔も今もこの先も、ずっとな。
「……嬉しい、サッチ。好き、大好き……」
癖のない黒髪を揺らし、肩口にグリグリと頭を擦り付ける、名前。そのたび豊かな乳房が、むにゅん、むにゅん、と押し付けられ、素肌を刺激する。
ちょ、この感触、ヤベェ……
「あー、名前ちょっとタンマ。一旦離れてくれ」
「え、どうして」
長年抑制してきた気持ちを吐き出し、名前の気持ちを受け入れた今、倫理観という理性は消え去り、残るは本能のみだ。
そんな中、好きな女が裸で豊満な胸を押し付けてきているこの状況。
ただでさえ生殺しの状態が続いて辛いのに、これ以上刺激されると抑えが効かなくなっちまう。
だが、名前は初めてだ。
俺に薬を盛り、犯そうとした行動力はとても生娘のそれとは思えないが、処女であることは間違い。
本人も申告してるし、俺も断言する。
記念すべき初体験は俺がリードして優しく抱きたいが、未だ動かないこの身体じゃそれも叶わねェ。
互いの気持ちは分かり合えたんだからここは焦らず、日を改めてやり直さねェか。
そう提案すると、名前はにっこり微笑んだ。
理解してくれたと思った。が、違った。
「いやよ」
「なんで!?」
今のは完全に同意してくれた笑みだろ!
「だって、サッチ言ってたじゃない。海賊はいつ命を落とすか分からないから、悔いが残らないように生きろって」
ああ、言ったな。
「海賊なら欲しいものは奪え、とも言ってた」
それも、言った。
でもその言葉は部下達に言い聞かせたもので、非戦闘員のお前にじゃないんだ、名前。
むしろ四番隊しかいない会議室での発言を、どうしてお前が知っているんだよ。
「だから、今度なんて絶対いや。サッチがダメって言うなら無理に奪うわ。元よりそのつもりで薬を盛ったんだし」
「……でもお前、処女だろ。どうやるかなんて……」
「大丈夫。サッチの部屋にたくさんあった教材で手順はバッチリ予習済みだから。サッチは力を抜いて天井のシミでも数えてて」
……おいおい、逆だ、逆。
それは男が初めての女にかける言葉であって、女が男に言う台詞じゃねェ。
しかも、今時そんなベタなフレーズ使う奴いねェよ。と思うが、最近そんな台詞のあるエロ本を読んだのを思い出し、ハッとする。
まさか、教材って……
俺のお宝(エロ本)のことかーー!!
隠してあるのを探して読んだのか……!?
アレには、俺のフェチや性癖が山ほど詰まっているんだぞ。
しかも、大半がアブノーマルや変態チックなものだ。
それを名前に見られたかと思うと、俺の中の大切な部分がごっそりと削り取られた気がした。
頼む、誰か嘘だと言ってくれ……
「そういえば、おっぱいの本がたくさんあったよ。サッチはおっぱいが好きなんだね。あと、変態ぽいのもいっぱいあった。女の人が縛られたり、目隠しされたり、イボイボがついた張形を挿入されたり、身体に生クリームやハチミツを塗って舐め回したりするやつも」
ああ、口に出して言うのはやめてくれ……
なんだこの羞恥プレイは……
俺は自分の顔が熱くなるのを感じた。確かに事実だ。事実だが、妹に面と向かって言われると、なんともいえない恥ずかしさが込み上げた。
「今日は用意がないけど、いつか全部やってあげるね」
名前はそう言って妖艶に笑うと、推定Fカップはある自分のおっぱいをふにゅんと掴み、俺の胸に擦りつけてくる。淡いピンク色の乳首が俺の乳首にこすり合わさり、吐息が漏れる。
そのまま身体を下にずらすと、名前は立ち上がった豆粒のような俺の乳首をペロペロと舐め、もう片方の乳首をしなやかな指先でこねくり回し、カリッと歯を立てて甘噛みした。
「ぅあ、あぁっ……!」
堪らず声が上がる。
「ああ、サッチ可愛い……もっと気持ちよくしてあげる」
嬉しそうに呟くと、名前は俺の乳首を飴玉のように舌で転がし、執拗にちゅうちゅうと吸って舐めた。
ああ、違う。違うんだ、名前。
俺が好きなのは女の柔らかいおっぱいで、自分の胸を愛撫されるのが好きな訳じゃないんだ。
ああ、でも、気持ちいい……
ドク、ドクと、股間が脈を打ちはじめる。
それに気付いたのか、舌がゆっくりと降下していく。
時折、ちゅっと肌に吸い付き、浅黒い肌に出来る赤い鬱血の跡に目を細めながら、名前は腹筋に浮いた汗をぺろりと舐めとる。
やがて足の付け根に辿り着くと、ぬるっ、とペニスが飲み込まれていく。熱い口の中。裏筋を舐め回され、敏感な亀頭をじゅるじゅる吸われ、身体がビクビク跳ねた。
「っ、ああぁっ、……ま、まて、名前っ、そんな激しくされると出ちまう!」
「出して。サッチの、飲みたい」
「くぅ、だめ、だ、不味いし、飲むモンじゃねェ……!」
「サッチのは甘いよ。汗も甘かったし、ここから出てる透明のもトロトロで甘いし。ね、出してサッチ」
ぐりぐりっ、と先端を舌先でほじくられる。
「ぅあぁっ、ああぁ……!」
そのまま唇で扱き上げられ、俺は呆気なく昇り詰めた。
ペニスが爆ぜて、名前の口の中にぴゅるぴゅると迸る。
玉が重くなるほどご無沙汰で、かなりの量が出た。
濃度も濃かったと思う。
でも名前は、ドロリとした濃い液体を恍惚の表情で飲み込むんだ。
「ん、美味しい…」
そんな台詞を吐きながら、コクリと飲み下す名前に俺は居た堪れなくなった。
妹になんてモン飲ますんだよ。
我慢できなかった自分を責めるが、飲みきれなかった精液が名前の口の端からタラリと溢れ、それを指先で掬って唇に擦りつけて舐める名前を、食い入るように見つめてしまう。
……エロい。エロ過ぎるだろ……
俺の出したものを心底美味そうに舐める名前に、俺の目は釘付けだった。やがて最後の一滴まで舐め終えた名前のトロンとした瞳と視線が合い、ハッとする。
「ば、ばか! なんで飲み込むんだよ」
「ふふ、サッチ照れてるの?可愛い。大丈夫、甘かったよ。ほら」
名前が俺に口付ける。
舌を差し込まれ、苦い味が広がった。
……やっぱりクソ不味いだろ。なんて事すんだよ……
無抵抗の俺に、名前はやりたい放題だった。
