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存在意義 - 03

「俺も名前のを舐めたい」

自分の味を無理やり教えこまれて消沈する俺は、口の中を舐め回して満足する名前に言った。

「俺も名前を気持ちよくしたいんだ。名前も少しは慣らさなきゃ痛いだろ」

本当なら思う存分その身体を味わい、舌や指で丁寧にほぐしてやりたかった。しかし、いまは舌しか動かない。

それに、俺だけ気持ちよくして貰うなんて嫌だ。

そんなの、セックスじゃない。

「俺だって名前に触れたいんだ。頼むよ」

流石に恥ずかしいのか、懇願しても名前はなかなか首を縦に振らない。しかし、慣らさないと入らないかも知れないだろ、と諭すと、迷いながらも渋々頷いてくれた。

「……わかった。じゃあ、どうすればいい?」

不安げに訊く名前に指示して、膝立ちで顔の上に跨ってもらう。

「……うぅ、サッチ、この体勢すごく恥ずかしい……」

「すげェ、いい眺め」

眼前に晒される、名前の秘所。

下から見上げるそこは圧巻だった。

毛は薄くて、閉じられた割れ目は綺麗なサーモンピンク。

そんでもって触れられてもいないのに、太腿まで垂らすほどに濡れて、ぬらぬらといやらしい光を放っている。

ああ、もうたまんねェ。

俺のを舐めただけでこんなに濡らすとか可愛すぎるだろ。

これだけ濡れていれば挿入は難しくないだろうが、俺も名前のを舐めたい。舐めたくてたまらない。

そのまま腰を落として貰うと、ぷにっと濡れた秘部が唇に触れた。

「んっ、あぁ……!」

思わず吸い付くと、艶やかな声が上がる。

割れ目に添うように何度も舌を這わせ、柔らかくなってきた入り口に舌を差し込む。名前の身体がビクリと震えた。

「痛いか?」

「っん、大丈夫……」

「そうか。もう少し奥まで挿れるから、痛かったら我慢せずに言えよ」

「う、ん、っ、ああっ……」

グニグニと舌を差し入れて広げると、きゅっと締め付けていた膣がじわりと馴染んでいく。ぐるりと中を掻き回すように動かし、溢れてくる蜜を味わった。

「あっ、はあっ、サッチ……」

艶を増す声に、一度放出したはずの股間が張り詰めていく。そういえば俺は名前にイかされたんだった。挿入時の痛みを少しでも和らげようと慣らす事に夢中になっていたが、俺も名前をイかせたい。乱れさせたい。

ぬぽっと膣から舌を引き抜いて、小さな蕾をべろりと舐め上げる。途端に名前の腰が跳ねた。やっぱりここは気持ちいいんだな。

「あっ、サッチ、そこ、や、ああっ、あぁぁ……!」

包皮を舌で剥き、尖らせた舌先で擦ると、俺の顔を挟んでいる太腿がガクガクと痙攣する。感じている顔が見れないのは残念だが、必死に悶える姿が可愛いい。

唾液をたっぷり付けてベロベロと舐め回す。つん、と硬くなった剥き出しの蕾を緩急付けて吸い上げると、名前が一際高い声を上げた。

「んあっ、ああぁっ……!」

全身が強張り、そのあと弛緩する。

おそらく達したんだろう。名前の身体が力を失い、俺の顔の上に座り込んだ。

むぎゅっ、と顔面に押し付けられた秘部がビクッ、ビクッ、と脈を打つ。堪らない感触だった。呼吸もままならないほど圧迫されてるのに、俺はひどく興奮した。

「……っぁ、ごめん、サッチ。苦しかった、よね……」

両手を付いて腰を浮かせた名前が、俺を覗き込む。

頬を朱に染め、息を乱すその姿はなんとも扇情的だ。

「平気だよ。ってか、もっと押し付けて欲しいくらい、すげェ興奮した」

ほら、と反り返るギンギン状態のペニスに視線を促すと、それを見た名前の頬がさらに赤く染まった。

「……嬉しい、サッチ。私で興奮してくれたんだ」

「当たり前だろ。惚れた女の乱れる姿見て勃たねェ男はいねェっての」

「ね、挿れてもいい?」

「ああ。でもゴムは付けてくれ。その引き出しに入ってる」

まるで男女逆のような台詞を言って、ベッド脇の引き出しに視線を送る。しかし、名前は引き出しではなく俺のペニスに手を伸ばす。そして、身体を移動させて下半身に跨ると、亀頭を花弁に沈めていく。

「うっ、っあぁ、んんっ……」

ズブズブと、止める間も無く狭い膣の中に飲み込まれていく俺のペニス。

「…っ、くぁ、まて、名前! 避妊しないと子どもが出来ちまう、だろっ!」

「……んぁっ、い、いの。私は、サッチの子が、欲しいっ、の……!」

断言して、一気に腰を下ろす。

誰も通ったことのない狭い隘路を、俺が初めて進んでいく。壁を突き破り、やがて、ブチッ、と音がして名前の中に俺の全てが収まる。

「っ、ぁあぁっぁあ……」

相当痛いんだろう。押し殺した悲鳴を漏らす名前の額には、脂汗が滲んでいる。それでも呼吸を整えると、名前は自分の下腹部にそっと手を置き、愛おしそうに撫でた。

「……ここ、に、サッチがいるのね。あの時、死ななくて本当に良かった。サッチと、一つになれた……」

ぽろっ、と涙を零して微笑む名前は、すごく綺麗だった。

名前が死んだら、俺も死んでいた。

オヤジを海賊王にする志は忘れてないが、名前のことだけは別だ。産まれた時から傍にいる、何物にも変え難い存在。

この世で一番大切な存在なんだ。

じゃあもし、俺が死んだら名前はどうする?

……今まで誰にも、名前にも、マルコにも、オヤジにも話した事はなかったが、俺は昔から人の死期を知ることができた。黒い影が見えるんだ。影は死ぬ人間にだけ現れ、死期が迫るほど色濃くなっていく。船に乗ってからも大勢の仲間に影ができ、皆死んでいった。

この力が悪魔の実の能力か、生まれつきなのかは分からねェ。だが、海に浸かっても平気な所を見ると、おそらく後者なんだろう。

まあ、例え実の能力だろうとなかろうと、俺には関係ない。こんな薄気味悪ィ能力を持ったせいで、実を食いたいだなんて思ったことは一度もなかったから。

これ以上、悪魔をこの身に宿らせるなんてごめんだ。

俺はこの先も実を口にするつもりはない。

ただ、この能力は物心がついた時にはすでに備わっていて、それが原因で実の両親に殺されかけた。

もう顔も覚えちゃいねェが、両親は死ぬ人間を次々と言い当てる俺を気味悪がり、化け物だ死神だのと喚き散らしながら目にナイフを突き刺そうとしてきたのは覚えてる。

辛うじて逃げ遂せたが、俺は左目の横をざっくりと切られ重傷を負った。深い傷だった。血がドバドバ出た。その時の傷痕は、今でも左目の横にくっきりと残っている。

きっと、名前の両親が薄汚い路地で倒れている俺を見つけて病院へ運んでくれていなかったら、俺はあのまま息絶えていただろう。

名前の両親がしてくれたことはそれだけじゃなかった。毎日見舞いに訪れ、病院に治療費を支払い、引き取り手のない俺を我が子として迎え入れ育ててくれたんだ。

本当に感謝しかない。

そうして両親の元で名前が産まれ、幸せで平穏な年月を過ごす中、二人に黒い影が見えたとき……俺は絶望した。

毎日祈った。でも影は消えなかった。濃くなるばかりだった。俺は我慢できず、影のことを両親に打ち明けた。

信じて貰えないかも知れない。実の両親のように殺そうとするかも知れない。そんな覚悟もした。だが二人は俺の言葉にしっかりと耳を傾け、用心してくれた。

しかし、二週間後……

食料品を買いに出た先で、二人は事故に遭い還らぬ人となった。

たった二歳の、名前をおいて。

死を予知できても俺は無力だった。

運命は変えられなかった。

──その影がいま、俺とオヤジとエースにある。

近い将来、この三人は死ぬ。

それが半年後か、一年後かは分からねェ。

だが、そう長くは生きられないだろう。

影は日を追うごとに濃くなっている。

特に俺のは濃い。おそらくもって一月か二月か、その辺りだ。

だが運命に抗う術はない。

何を試しても無駄だった。

影が出来た人間は、死ぬ。必ず死ぬ。

それだけは確かだった。

──名前は、俺が死んでも生きてくれるだろうか?

答えは、否だ。

だから、一つ託すことにした。

名前が俺との子が欲しいと言った時に決心した。

そして、名前とひとつになってそれは確信に変わる。

なぜか、はっきりと感じるんだ。

名前は俺の子を宿す、と。

きっと、俺は名前の命をこの世に残すために生まれてきたんだろう。

名前の両親の死後、名前を育て、そして、俺の死後も名前をこの世に留まらせるために俺は生まれてきた。

それこそが、俺の存在意義だったんだ。

そう考えると、実の親に殺されかけたクソみたいな俺の命が、とてつもなく意味のあるものになると思わないか。

子を身籠れば、名前は生きてくれる。

あとは、必ずマルコが何とかしてくれるはずだ。

……なァ、マルコ。

いつもいつも、お前には面倒ばかりかけてすまねェな。

頼りっぱなしで本当に悪ィと思ってるよ。

でも、正真正銘これが最後だ。

俺が死んだら、名前と子を頼む。

オヤジもエースもいなくなっちまうが、お前なら必ず乗り越えられると信じてる。

兄弟妹達を支えてやってくれ。

見守ってるよ。

俺はようやく薬の抜け始めた手を伸ばし、名前の身体を自分の身体の上にそっと倒す。胸にかかる重みと体温が心地いい。その細い小さな身体を抱き締めると、重なる胸からトクン、トクン、と命の鼓動が伝わってきて、ひどく心が安らいだ。

「愛してるよ、名前

「私も愛してる、サッチ……」

髪を梳いて、口付ける。そのまま身体を入れ替えて名前をベッドに寝かせると、上半身を密着させたまま腰を打ち付けた。

「んあっ、ああっ……」

さっきは触れられなかった蕾に親指を添える。

中を穿ちながら擦ると、ぬるぬるとひどく濡れてくる。

愛液が止め処なく溢れ、蕩けた結合部はぐちゅぐちゅと卑猥な音を奏でていた。

俺の先走りも名前の中にたくさん出ているだろう。

繋がったまま、溶けてひとつになれればいいのに。

そう、思った。

今が永遠に続けばいい。

このまま時が止まればいい。

強くそう願いながら、俺は腰を動かし続けた。

「ああぁっ、んぁっ、サッチ、好き……好きっ!」

「っ、俺も、好きだよ……名前、」

「愛し、てる、サッチ…ずっと一緒に、いて、ね……どこにも、行かないでね…っ、…」

黒い瞳から、ぽろぽろと涙が零れていく。

俺の首にしがみついて、どこにも行かないでと泣く名前に、ぐっと胸が詰まる。

俺はなんも言えなくて、ただキスをした。

貪るような、激しいキスを。

噛み付くように唇に吸い付き、上顎を擽り歯列をなぞる。舌を捻じ込ませて名前の口腔を余すことなく舐め尽くし、甘い唾液を一滴残らず全部啜った。

俺の舌に、必死に応えてくる名前が愛おしい。

愛おしくて、愛おしくて、堪らない。

ああ、なぜ俺は死ぬんだろう……

生きたい。生きたい。生きたい。

生きて、名前と共に在りたい。

一人残される名前を想うと、心が張り裂けてしまいそうだった。

唇を離すと、何も知らない名前が腕の中で幸せそうに微笑む。

ぎゅっと胸が締め付けられる。

泣きたくなる。

ごめん……

ごめんな、名前……

傍にいてやれなくて、ごめん。

お前を残していく俺を、どうか許してくれ……

俺は浮かんでくる涙を抑えるように微笑むと、名前の華奢な身体を思いっきり抱き締めた。

そして、目一杯俺を抱き締め返してくれる彼女の最奥に、溢れる想いを全て注いだ。

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